一滴の秘薬と無数の命

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日本のとある地方にある小さな村、スーパーやコンビニは無く、一週間に3・4度来るトラック商店が唯一のお店、村に住んでいる人間は十人前後、昔からこの村に住んでいて、この村では引っ越しや移住者を入れない掟がある。 なので一般の人間はこの村の存在を知らず、知っているのは「限られた人々」のみ。 実はこの村は一般的な田舎の村ではなく、この村では政府が隠している極秘の秘密組織がとあるビジネスを行なっている、しかしそれを知っている人も「限られた人々」。 それは「生贄ワーク」と呼ばれている、職を持たない人間を強制的にその村にある極秘施設に連れて行き働かせ、「幻の秘薬」を作らせていた、その「幻の秘薬」は生物のみならず自然などにも影響を与えるほど強力な薬だ。 人が飲めばどんな難病や障害でも治し、生物に投薬すれば大きくなったり凶暴になったりもする、苗にかければたちまち大樹になり、空気に撒き散らせば有害なウイルスを消滅させる効能がある。 しかしその秘薬を作るためにはかなりの数の労働者が必要で、しかもその秘薬の秘密は決して国のみならず村の外には漏らしてはいけない、しかしこの秘薬による経済効果や景気回復にはかなり期待できた。 そこで政府が決めた人間、職を持たない人間や家族から見放された人間を収容して、ある程度の知識を叩き込み秘薬作成のために年中無休・自由時間無しの強制労働をさせている。 そして彼らはその生活を何年・何十年と繰り返し、老衰が病死などで死亡したとしてもその遺体が外の世界に出られる事は無く、実質彼らは日本の景気回復や医学・科学発達のための「生贄」とされた。 村の住人はそれを知ったうえで、余所者に対して冷たくあしらったり、散歩をするフリをして村内に逃げ出した者がいないか見回りをしている、その村の住人にも秘薬の資金のおこぼれをもらっている。 しかしどんなに「生贄」が毎年毎年懸命に働いても、作れる秘薬は十人が五十年働いてやっと一滴が作れる程度、しかも彼らには何の報酬も褒美も無い、ネットでは「あの村に立ち入った者は生きて帰れない」とまで囁かれている。
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