月乃宮 なお

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月乃宮 なお

 草木が茂る景色の中、人工的に作られた白い石段を私はゆっくりと歩いていく。  所々に崩れ落ちた白い岩壁が見え、蔦や苔がそれを隠そうとしている。  そこは人の気配がない廃墟でした。 (ん~良い天気♪)  暖かい日の光と心地よい風が、ここが今でも大切な場所だと気付かさせてくれる。  私は石畳の終点になっている場所へと到着する。  ぐるっと見渡せる小さな廃墟は、神殿らしき建物一つと、庭園らしい整えられた木々、模様のように彫られた石床の溝を流れる水路のようなものがあった。  神殿らしき建物は屋根も壁も崩れているけど、建物の奥にいくと水飲み場のような小さな泉がありました。  それは見守るように居る竜の石造の前にあり、今も溢れ流れている水がきらきらと輝いています。  この泉が外の庭園を流れる水の源になっているようです。  (この水、美味しそう。喉渇いたし…)  私は泉を覗き込んだ。  短く整えられた黒髪がちょっと跳ねていた。 (む…寝癖がついてる…この世界って鏡あるのかな?)  水をすくって跳ねた髪をなでながら私は適当な石に腰を下ろしました。  そして私は朝からの事を考えることにした。  いつものようにセーラー服を慌てて着替えて、高校にいくはずだったのよね。  起きたらお祖母ちゃんの知り合いの家にいて……しかも日本じゃないらしく、私の住んでた世界でもないらしい。  でも、言葉は一緒だし、食べ物も一緒なんだよね。ここに来た理由はお祖母ちゃんが知ってるみたいだから、帰ってから聞くとして、きっかけは多分あれかな?  昨日もらったカード。こっちの世界に一緒に来てたし。  朝起きたら知らない部屋で…知らない人に親戚だと説明されて、別の世界だとも聞かされて…  混乱しているところに、朝の散歩に出掛けると良いと言われて…  私は言われるままに、歩いていた。 (それにしても…ここって気持ちいいなぁあ~)  腕を上に伸ばして深呼吸をすると、進学に悩んでいた自分の心が癒されていくような気持ちになった。 (家にもどろうかな。おじさんとおばさんはこの森の管理人みたいなこと言ってたけど、ここの遺跡を守ってるのかな?)  遺跡に降り注ぐ光が、一瞬途切れた。  バジャァンッ!  それが何かを考える前に、突然空から泉に向かって何かが落ちたという事だけは判った私は直ぐに立ち上がり後ろに飛ぶ。  数秒の時間が流れ、何事もなかったような静けさが戻った。 (なになに?)  私はゆっくりと泉の中を覗き込んだ。泉がちょっと茶色に濁っていて、その下に白い物が見えた。 (ボール? 毛が生えてる……動物?)
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