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「ううん。違うの。契約とかじゃなくて、友達として呼び合う名前がほしくて私が勝手につけたの。モカもそれならいいって言ってたから。」
モカが私の言葉に付け足すように聞いてきた。
「なお~。僕の名前、なんでモカってつけたの?」
「えっ?」
(泉に落ちたとき水が濁ってコーヒーみたいになったから…って言えないしな~)
私はちょっと引き攣った笑顔を元に戻して、
「意味はないのよ。可愛い名前をつけてみたの。かわいいでしょ?」
みんなに同意を求めるように私は答えた。
ミリアさんは珍しそうに私達を見ながら、さらに聞いてきた。
「この世界の人じゃないあなたらしいわね。精獣ってのは、特別な存在で滅多なことがないかぎり人とは関わらないのよ。友達にしようなんて考えないし、それに、出来ないしね。…そうでしょ。モカちゃん。」
ミリアさんは面白いものでも見てるような目でモカに話しかけていた。
「はい。出来ないです。」
モカは謝るような声で言葉を続けた。
「でも、僕を僕として見てくれたから、友達っていってくれたのが嬉しくて…」
私は萎縮しているモカをそっと抱き上げて誰となく聞いて見た。
「出来ないってなんでですか? 精獣だから? 人じゃないから? 物みたいに接するのが当たり前なの?」
私はだんだん声が大きくなっていった。
「契約、契約って、モカはそのためだけに存在するの?」
私はやり場のない感情で言葉と体に力が入っていた。
「ごめんなさい。」
私は何も判っていないのに、自分勝手に怒ってしまってた過ちに反省して、少し深呼吸してミリアさんに頭を下げる。
「あなたの竜も契約とかなの? あなたの言葉は道具扱いには見えなかったけど…」
「私のほうこそ、ごめんなさいね、悪気はなかったのよ。」
ミリアさんが謝りながら話を続けてくれた。
「そうね…私は火の神を守る一族で、神官になると神の使いとされる竜を従えて竜騎士って言うのになれるの。まわりからみればこれも契約のひとつと言ってもいいのかもね。でも私もあなたと同じ。」
窓から見える竜を見ながらミリアさんは言葉を続けた。
「あの子は私の家族よ。とても大切な。だから私はあなたがその子を友達として接しているのが嬉しくてね。その子もあなたの事を大切な友達と思っている事もね。」
「そうだったの…ごめんなさい。」 私はミリアさんにもう一度謝った。
「精獣ってね、竜とかと違って、数も少ないし、人が精獣と契約するって言うより精獣が人を選んで契約するって方が正しいかな……そうね、私から言わないほうがいいかな。」
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