月乃宮 なお

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 そう言ってミリアさんはモカを見つめていた。  何かの合図だったのか、モカは私の腕の中から離れて、テーブル真ん中から私を見てきた。 「なお~。」  寂しい声でモカは喋り始めた。 「僕達の契約って言うのは、詳しくいうと、契約した人間が生きてる間ずっと側にいて、色んな力を与えて、魔力を上げたり、肉体的に強靭にしたり、幸運を与えたりとか、それぞれ違うんだけど… で、見返りに命が尽きた時、魂を貰うのです。その魂を取り込んだときに僕達は聖獣になる事が出来るのです。より強い魂ほど聖獣になったときの力が増すから、魂の力が強い人間…精神力の強い人間に僕達は姿を見せて契約するのです…」  私はちょっと驚いたけど、それと友達になれないって意味がまだよくわからなかった。 「ふ~ん。でもそれって、友達になれないってのと関係あるの? モカが誰かと契約したら、もう会えないのは判ったけど…」  手を伸ばしてモカの頭をやさしく撫でたおじさんが口を開く。 「それは私から説明しようかね。」 撫でた手を収めて話始めた。 「モカが言ったように精獣が契約したい人間に姿を見せて契約をする。そして人間は力の代償に命を差し出す。これがこの世界の常識って事は分かるよね?」  私は素直にうなずいた。 「だから、この世界の人間は精獣をひとつの神として、また悪魔として、拝め恐れる存在なんだ。そうやって教えられた者たちが実際に精獣と対峙したとき、どんな態度をとるか…わかるかね?」  私は想像してみた。神とか悪魔が私の前に現れたら… 「この感情がまず、人間側からみて、友達になれない理由になるね。」  おじさんは私に微笑みながら会話を続けた。 「そして、精獣は契約したい人間の前にしか姿を現さない。これは今までの歴史上絶対だった事なんだよ。契約するために人間と関わる。これが精獣側からの友達に出来ないって理由。」  モカが黙っている。そのモカの頭をおじさんがまた撫でて、 「だけどね。この子は何らかの理由で、ナオちゃんに見つかった。そしてナオちゃんはこの世界の常識に縛られなかったからこの子を普通に扱った。それが嬉しかったんだろうね。この子はまだ契約者を選べるほど育ってないみたいだし…」  モカがうん、と頷いたのをおじさんは確認して話を続けた。 「精神力のない人間には見ることも、触れることもできないんだよ。」 「えっ…」   私ははおじさんに聞き返す。 「たとえモカがあの場所にいたとしても、なおに力がなかったら見えていなかったって事だよ。」 (私の力…) 「さて、ここからが本題だよ。」
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