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おじさんは手を戻して厳しい顔つきになってテーブルについている私達を見渡した。
「結論から言うと。なおとこの子は契約が発生している。っといっていいだろうね。」
私はびっくりしてモカを見たら、モカもびっくりしていた。二人でおじさんの顔を見る。
「えっ…名前っていっても呼び名ってことだったし…」
私が慌てながら喋る。
「僕も契約するとかじゃなくて…友達っていってくれたし…」
モカは不安そうな声でおじさんを見ている。
おじさんは私とモカを見つめてさらに続けた。
「発生であって、まだ成立はしていないって事だよ。この子はまだ契約できるまで育ってないから契約の魔法陣が作れない。予約をしていると言った方が分かりやすいかな。」
モカも私も言葉なく、おじさんの話を聞いていた。
「普通は精獣の方から契約を進めるものなのだが、未熟な精獣にはその権利みたいなものがないみたいだね。だから、ナオちゃんが名前をつけてこの子が承諾した時点で、ナオちゃんが契約の儀式をしたことになる。だけど、この子には契約の力がまだないので実際には、魂の癒合も獣力の結合も起きない。…ではいつ成立するのか。」
おじさんは一呼吸置いてテーブルにあったお茶を飲んだ。そしてモカに目線をやると、
「この子が成熟して魔方陣を出した時、強制的に契約が成立すると思う。ナオちゃんがその場に居なくてもね。」
私は、事の大きさと過ち、モカの未来、人生を決めてしまったこと。色々な思いで何を考えればいいのか判らなくなっていた。
モカを両手でやさしく持ち上げて、私は小さな声でモカに謝った。
「…どうしよう~」
モカを膝の上に戻して私はみんなに聞こうと顔を上げた。
「ねぇ、おじ様。それって魔方陣を出さなければずっと保留ってことになるのよね?」
ミリアさんが悩んでいた私の答えを見つけてくれた。
「あ、そうだよね。そうでしょ、おじさん。」
おじさんに詰め寄るかのように私は訊いた。
「ああ、そうだね。ナオちゃんとの契約はそれで回避できるだろうけど、そうすると、この子はずっと聖獣になれないのだよ。」
(そうだった。…モカは、私以外と契約できないんだった。)
膝の上にいたモカが私の方にくるっと向いた。
「僕は大丈夫です。聖獣になるのがずっと先になるだけだから、なおとさよならするまでこのまま一緒にいたいです。」
「さよなら? そっか私はこの世界から消えるわけだから、無効ってことになるのか」
私はこっちの世界をたくさん見てみたかったけれど、すぐに迎えが来るのを思いだして少し寂しくなった。
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