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「なおちゃん。それはちょっと違うかな。 その子はもう納得したみたいだけど。」
おじさんはモカに優しく語りかける。
「その子は私達と違って寿命っていうのがまだ無いのだよ。聖獣になって初めて寿命が出来るのだけど、それでも500年とか生きるからね。だから、この子が言っている『さよならは』、なおが大人になっておばあちゃんになって体から魂が放れた時のことを言っているんだよ。どこに居ようと契約は切れないだろうね。」
(わたしが死ぬまでモカはこのまま…)
モカはもう迷いがないのか私に笑顔を見せていたが、私はまだ前を向くことが出来なかった。
「モカ…いいの?」
「うん。 その代わり、僕をなおの世界に連れてってよ。」
モカが嬉しそうに私にせがむ姿で私はやっと前に向くことが出来た。
「もちろん!お祖母ちゃんに頼んで一緒に行こうね。」
私に笑顔が戻ったので、おばさんは台所に戻ってクッキーとお茶のおかわりを持って来てくれた。
「おじ様、おば様。私は用事の途中だったので先に失礼しますね。さっきの魔族の事も伝えときます。」
ミリアさんが席を立って、私とモカへと笑みを見せました。
「じゃ後でまた会いましょう。モカちゃんもまた会おうね。」
私は急いで席を立ち、ドアから出て行こうとするミリアさんを呼び止めた。
「えっと、ミリアさん、色々ありがとう。私達の事なのに心配してもらって。」
「いいの。気にしないで、あなたのこと気に入ったから、もしよかったら私の事ミリアって呼んでね。
じゃ、またね。」
ミリアさんは扉を開けると同時に胸の辺りから光があふれて、出合ったときの鎧姿にもどっていた。
私も後を追って、家の外に出るとミリアさんは竜の背中に跨るところだった。
「私の事もなおって呼んでください! あとっ! 今度その子に乗せてください~」
ミリアさんが竜の背から手を上げて、
「なお。その約束は難しいかも。でも今度挑戦させてあげるね~。」
翼の羽ばたきと共に飛びだった竜に手を振りながら私はふと思い出した。
(あれ? 私が行かなければならないって場所の話ってどうなったんだろう?)
家の中に戻った私は待っていたモカとテーブルに座って、暖かいお茶とクッキーに手を出した。
「おじさん、私どこいくの?」
もう、モカとの問題はとりあえず解決した安堵感もあって、私とモカはクッキーを食べながら訊いていた。
「月の王宮。ルミナ様に手紙を渡して欲しいのだよ。モカと一緒に。」
私とモカは『ルミナ様』っていう単語を聞いて顔を見合わした。
(女王様に会うの? ・・・手紙?)
「私が直接渡すの?」
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