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私は肘くらいの深さしかない泉に右手を突っ込んで、その白いソフトボールみたいな物を取り上げた。
(やっぱりこれ生き物だ…)
それを服とスカートの拭きやすいところを使って濡れている体を包んでみる。
ある程度拭き取ったので私は両手に乗せてまじまじと観察した。
(暖かい…顔はどこだ? あっ! この硬いのってクチバシ? じゃぁ…この左右にあるのが手?
ってことは…あった。足だ。
フクロウの子供ってたしかこんな感じだったかな?)
顔らしき場所を正面にして覗いていると黒いガラス玉みたいな目が開いた。
(あっ! 起きた。可愛いいなぁ~暴れないかな? 逃げないかな? 噛まないかな?)
私は小さな声で、
「おはよぉ」
手の中にいる小さな動物は開けたばかりの目をぱちぱちと瞬きしていた。
「おはようございます」
(え?)
一瞬、思考が止まった。
私は呼吸をゆっくりと再開して、手の中にいたものを日向になっている石の上に置いた。
「喋れるんだ…」
まあ、ありかなって納得しながら私は小さな動物に喋りかける。
「えっと、はじめまして私の名前は月乃宮なお。あなたは?」
目の位置が一緒になるように膝を落として、白いふわふわの子を見つめる。
「はじめましてです。僕の名前はまだ無いんです。」
そういってその子はパタパタと腕らしきものを動かしていた。
私はさっき腰掛けていた岩に座りなおして会話を再開する。
「あなたは…フクロウの子?」
まじまじと見ながら私はやっぱり可愛いな~って思って顔が緩んでいた。
「えっと…僕…怖くないです?」
「うん。全然!」 私は言葉を続けた。
私はこの愛らしい生き物がなぜか大好きになっていた。一目惚れ?
小さな白い子は、目をぱちぱちとして
「精獣って知っています?」
「ん? 知らない。それって何?」
私は興味津々で白い子に問いかけた。
少し考えているのか、ちょっとの時間が流れる。
「僕達は魂の輝きが強い者と契約する事で大人になることが出来る種族なんです。そして契約の証に私は名前を付けて貰えるのです。」
私は白い子の説明がいまいちよく理解できなかったがとりあえず納得してみた。
「じゃあ…それまで、友達とかってどうやって呼び合うの?」
「会話は直接相手の意識に伝わるので無くても…それに僕には、」
そう言ってちょっと悲しそうな顔になった。
「ともだち…いないの?」 私の問いに白い子は小さく頷いた。
「じゃあ、私の友達になってよ、ね。だめかな?」
私はちょっと強引だったかなと思い反省していた。
「いえ!そんなことはないです。」
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