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銀竜 ナセラ
守備兵に守られた門を抜けると、銀礼の神殿の全貌が目に飛び込んできた。
正面には高くそびえる教会のような建物、その左右に繋がって広がる3階建てのマンションみたいな建物、すべてが王宮とおなじ白い石でできていた。
「最初、城から見たときは小さい建物って思ってたけど、城が大き過ぎだったのね。」
ティオが私の隣をゆっくりと歩いてきた。
「オルトリアスに住む民の全ての政をここでしているのよ。」
「へぇ~」
私は再度神殿を観察して、国会議事堂やホワイトハウスの建物を連想していた。
(…なるほど。)
お姫様モードになったティオの後ろを、私はモカを抱きかかえてゆっくりと歩調を合わしてついていった。
ハミルさんは相変わらずのナイト様だった。
人々がティオに向かって静かに頭を下げる中、大きな門をくぐりぬけた私達は真っ直ぐと伸びる青い絨毯を進んでいく。
100メートルくらい歩いた先には低い壇上と並んだ椅子が左右に。壇上奥の壁は上から水が滝みたいに落ちていて、薄いカーテンのようになっていた。
(ほんと、教会みたい…)
水のカーテンの奥の壁に何か描かれているみたいだけど、それをハッキリと見ることが出来なかった。
壇上には少し歳を感じさせる皴が目立つ、ふっくらとした女性が私達を待っていた。
「遅いですよ。ティオ様。」
芯の通った深い声がティオに向けられた。
ティオがちょっと照れているのか、恥ずかしいのか、そんな態度を見せていた。
「はい、すみません。すぐに教室に入りますね。それと、友人の見学を許してくださいませんか?」
視線が私に向けられた。
「はい。ルミナ様から聞いてますよ。私が案内させてもらいますね。」
優しい顔の女性が壇上から降りて私のところに来た。
「ナムル様が案内するのですか?」
ティオが驚いている。
「あら、私じゃ役不足かしら?」
皮肉を言ってるのが私にも判った。
「お仕事の方は、もうよろしいのですか?」
なんかティオがすまなそうな顔でこっちを見ていた。
「私のことよりティオ様は早く着替えて教室に入りなさい。」
「なお。がんばってね。」
私に何か言いたかったのだろう。ティオは部屋の右手にある扉から忙しく出て行った。
(なにをがんばれと…)
「ナムル・リンシアよ。」
私も自己紹介してモカを紹介した。
「人の世界へようこそ、モカ様。」
私とモカはちょっとビックリした。
(そっか、精獣だもんね。)
「なおさん。この世界の歴史とか、興味ありませんか?」
今、一番知りたい事を言われたのでちょっとびっくりしたけど私は即答した。
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