銀竜 ナセラ

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 水晶に写し出された映像を真剣に見ていたなおとモカは大きなため息をついた。数分間の映像 に見入ってしまっていた。 「これって伝説を映像化したんですよね?」  ナムルさんが「そうよ。」と答えながら石を取り出してもとの引き出しに戻した。 「どう? 分かりやすかったでしょ。次のを出すから待っててね。」 「「はい!」」  私とモカは同時に返事をしていた。  ナムルさんが私達を見て微笑んだから、私もモカの頭を撫でて笑ってみた。 「ナムルさん、今の映像だと、この世界に精霊や妖精がいないってことになるのですよね? 魔族も…」  私は思った疑問をモカを見ながら聞いてみた。 「はい。そうですね。さっきのが神の時代って言われてて、そこから、四界の時代と呼ばれる人と獣だけの時代が始まるの。」  ナムルさんが新しい石を乗せて、また手をかざした。 「四界の時代の終わりからの話です。」  私とモカは水晶の中を無言で覗き込んだ。      神々の存在を忘れた人間たちは大地の支配者となった。  そして、神が与えた大地を壊し。空を黒く染め。海を汚していった。  太陽神ゼルと月の女神レナはまだ深い眠りの中にいた。  大地に異変が起こった。  闇の門が開いたのである。  大地を空は闇に覆われた。  魔界で生まれた獣や精霊が、人間を魔族に、動物を魔獣に変えていった。  人間はなすすべも無く滅びようとしていた。  精霊界の光の精霊ルゲルと月の精霊ミレナは闇に覆われた大地と空を見て深く悲しんだ。  そして、天界の太陽神ゲルと月の女神レナを起して、人間界を助け欲しいと願う。  愚かな人間に愛想が尽きた神は人間界を捨てた。  しかし光の精霊ルゲルと月の精霊レナの願いは強く、神は人間に試練を与えることにした。  それは闇を振り払う勇気と知恵、そして力を授け、自ら世界を取り戻せと。  愚かな人間達に悔い改める機会を与えるため、太陽神ゼルが人間の前に降り立つ。  光に包まれた全ての人間は神から試練を受け取った。のちに『光の啓示』と呼ばれる。  もう一人の神、月の女神レナは光の精霊ルゲルと月の精霊ミレナに試練を与えた。  大地の再生と人間の管理を命じられたルゲルとミレナは4つの精霊を従えて大地に降り立った。  月の女神レナは精霊界と大地を繋げた。  人間は精霊の助けを得るために神殿を造り、精霊の力を得て闇と戦った。  そして人間は世界から闇を取り除き、魔族を魔界へと押し戻した。  だけど闇の門は閉ることはなく、いまだ人間は神の試練の中にいる。
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