銀竜 ナセラ

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   水晶の映像が消えて終わりを確認した私は、また大きく溜息をついた。 「立って覗き込んでたから、腰が…。」 「あら。椅子を出すのを忘れてたみたいね。ごめんなさいね。」  石を棚に戻したナムルさんが棚の横にある積んであった椅子を持ってきてくれた。 「いえ。私も夢中になっていて、忘れていました。」 「なお~。面白かったです。」 「そうね。」   私はモカをテーブルの上に置いて、持ってきてくれた椅子に腰掛けた。ナムルさんは本棚から巻物みたいなものを持ってくるところだった。  テーブルの水晶を棚の隣の台に乗せて、持ってきた大きな紙を広げた。 「さっきのが、四界の時代の終わりから今の時代、『試練の時代』に入る話です。」 「精霊と人との関係がなんとなくわかりました。」  私はテーブルのモカを撫でながら、そう答えた。 (モカはこの世界を守るためにいるんだ。) 「モカはえらいんだね。」 「ぼく…えらくないよ。」  モカにとっては、重荷にしかならない事なのだと私は気付き反省した。 「ううん、ごめんね。モカは私の友達。それだけでいいよね。」  伝える言葉が見つからない私はモカをそっと抱きしめた。  ナムルさんが私を見つめている。微笑みの中に真剣な面影が見えた。 「私達人間は自然を守り、自然の中で生きていくのが大切なんです。そうすることで人間の試練も精霊達の試練もいつか終わりを迎えることでしょう。」  私は無言でその言葉に頷いた。  テーブルを見るとこの世界の地図だとすぐに判った。  ひとつの大きな大陸が真ん中にあり、あとは小さな島と海だけだった。 「この世界って大陸はひとつなのですか?」  ナムルさんが大陸の南南東の端あたりを指さしながら答えてくれた。 「はい。そうよ。あとは無人の小さな島があるだけです。ここが今いるオルトリアスになるのよ。光の精霊ルゲル様と月の精霊ミレナ様が降り立った場所。」  そういって、次々と絵が描いてある印を、指差していく。 「オルトリアスを中心に北に大地の精霊ムーロン、東に水の精霊リエム、南に火の精霊バルード、西に風の精霊ルーエ。それぞれが降り立ってそこに神殿が建てられたの。」  地図には気になる図が二つあった。  大陸のほぼ中心に大きな山が描かれてる。それと南西の大陸の端は黒く塗られていた。 「これってなんの印なんです?」 「そ。」  ナムルさんが話を続けようとしていたのを止めてしまったみたいだった。
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