月乃宮 なお

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「ルミナ様って人、私の話をきいてくれるかな? 国王様なんでしょ?」  私の頭の上に乗っかったモカが少し力のない声で、 「確か月の祭司もしてるはずです、神殿に行けば会えると思います。」   「モカ、一緒に行ってくれない?」  私は頭の上に乗っているモカに頼んでみた。 「もちろん! なおさんが無事に帰れるまで一緒にいきます。」  私はモカの返事が嬉しかった。そしてちょっと意地悪っぽい口調で、 「なお。って呼ばないと頭の上に乗せてあげないからね。」  モカはちょっとテレながら私の事をなおって呼んでくれた。  私は石畳の道が終わった木々の間を抜けて、草原になっている広場へと出る。  そして目の前の古いログハウスみたいな家が、お世話になっているおじさんとおばさんが住んでいる家。 「あそこよ。」  私はモカにそう言って、ちょっと早足になっていた。  グガッガァガガガガ…  突然、岩が崩れたような鈍い音が後ろから聞こえた。立ち止まった瞬間、頭から重みがなくなった。  反射的に私は振り向く。 「うぁあー」  モカの声が聞こえると同時に目の前には軽自動車くらい大きい黒い蜘蛛が地面から出てきているのが見えた。  モカは蜘蛛の口から出ている太い白い糸に巻かれて捕らわれていた。 (なになに…なんなの! この蜘蛛、モカを食べるき? 助けないと!)  私は辺りを見渡して武器になるようなものを探してみた。すると、家からおじさんとおばさんが慌てて出てきたのが見えた。 「おじさん~モカが…モカが蜘蛛に。」  私はそういいながら家の脇にあった薪割り用の斧を取りに走っていく。  蜘蛛へと駆け出したおじさんと私は入れ替わるようにすれ違った。 「ナオちゃん。危ないから家にはいって。」  おじさんはそう言って蜘蛛に向かって何か呟き始めていた。  私は足の長さと同じくらいある長い斧に手をかけて、めいっぱいの力で持ち上げた。そして両手に握り締めたまま地面からすこし浮いた状態になっている斧先を固定したまま蜘蛛へと走った。 「なおー。たすけてー」  モカは自分の状況を理解したみたいで絡まった糸の中でもがいていた。  蜘蛛と対峙しているおじさんを見ると、伸ばした手がぼやけて見える。 「ザルド!」  短く力の篭った声と共におじさんの手からぼやけてみえる玉のようなものが蜘蛛へと飛んでいく。  蜘蛛の顔辺りに命中したけど少しよろけただけで、また体制を持ち直した。  だけど糸に絡まったモカは、蜘蛛の口元から地面へと落ちていく。  蜘蛛は落ちたモカの事を無視するように短い糸をおじさんに飛ばす。  おじさんはひらりとそれをかわしていた。  また蜘蛛の口から糸が、今度は十数本まとめて飛んでいく。 「ウォルド。サイス。」
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