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(…へ?)
私は頭の中を整理しながら隣にいるナムルさんを見上げた。
ナムルさんは笑顔で私の方を見ているので、なるほどっと理解した。
「よろしくお願いします。」
私は深く頭を下げて挨拶をした。
頭に乗っていたモカがふわっと飛んで顔を上げた私の顔の前あたりで、浮かんでいた。
「あっ…モカごめん。」
「なお~。びっくりしたです。」
モカは私の出した腕の中に着地して私の顔を見上げている。目が虚ろだった。
(寝てたな…)
見上げてティオ達の方に視線を戻すと、色んな表情と視線を私とモカに向けられているのが判った。
(天使と悪魔か…さっきからの視線は私じゃなくてモカの方だったのね。)
私はナムルさんの方を自然と見ていた。
「はい。みなさん。実際に見た人は少ないと思いますが、この方が精獣のモカ様。なおさんのお祖母さんの精獣です。稀な事ですが契約者の意思でなおさんの付き添いをしているそうです。」
(なるほど! そうきたか。)
私はナムルさんの機転の上手さに拍手を送りたくなった。
ティオも同じ意見らしく、私を見て喜んでるようにみえた。
「モカ、そういう事だからね」
私が小さく話しかけるとモカは無言で頷いていた。
「ソリアルさん。」
ナムルさんが先生らしき人のところに行ってなにやら話している。
私はその場から動けず、ただ立っていた。
(う~ん。どうしたら…)
ティオに助けを求める視線を送ってそれに気付いたティオが私の方へと来てくれた。
「なお。魔術の修行を見てみない? ソリアル先生いいでしょ。」
ナムルさんが生徒と私の方を見て、
「私はこれからルミナ様のお手伝いに行きますからなおさんをよろしくお願いしますね。」
そういって私の方へと歩いてきた。
「また後で私のところに来てくださいね。ソリアルにその旨を伝えてあります。」
ナムルさんが部屋から出ようとするのを確認する間もなく、ソリアルさんが私と側にいるティオのところにやってきた。
「ティオ様、あまり派手な魔術を見せる事はダメですよ。それでは、各自の基礎力を見直すついでに魔術の初級から始めましょうか。」
ティオが嫌そうな顔をしながら返事をしているので、派手な魔術というのをやりたかったんだろうと思った。
「なおさんは私の側で見学していてくださいね。」
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