銀竜 ナセラ

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 ソリアルさんはまだ20代前半かな? 結構若く見える。襟付きの白のワンピースに銀色の刺繍。   腰には大きな銀の布が巻かれている。着物の帯みたいだと思った。 「では、まずは魔力の覚醒から。」  さっきまでティオ達がいた場所に私は移動した。  何もない空間に人の大きさほどある水晶がふわっと現れて浮かんでいる。 「この水晶に意識をこめると魔力に反応して白く輝くのですよ。強い魔力ほど輝きが増します。最初は小さな光なんですが、修行でみなさん強い光を出せるようになるのですよ。」  小さな女の子が慣れた動作で水晶に手をかざすと、懐中電灯ほどの光が溢れていた。 「あの子の歳っていくつなんですか?」 「去年入学して今9歳ですよ。一番下の子になります。」  私はこの世界の疑問を聞いてみた。 「ここに入学するのは、巫女や神官になるためなんですよね?」 「ええ。皆さんそのために日々努力していますよ。」 「あの子は…自分の意志で巫女になろうとしているのですか?」  私の思いを聞き取ってくれたソリアルさんは小さな少女を見つめながら話してくれた。 「生まれたときにその才能がほぼ決まってしまう私達は、育っていく環境の中で何をしなければならないのか悟っていくのですよ。人より魔力が高い私達は将来魔術で人のために生きていけるようにと。だから強要で入って来る子はいないのよ。ただ、小さい頃の周りからの期待や、この街の巫女や魔術士に触れ合う中でやらなければならない。と思ってしまうのも事実ですが。」  私はモカをぎゅっと抱きしめて自分の事やモカの事、色々考えていた。 「でもね。巫女としての修行や魔術の修行は大人になった時、本当にやりたいことが出来た時にとても役立つから、ここの卒業生で悔やんだ人はいないと思うのよね。」 「はい。ライカちゃん、良い感じになってきたね。」  ソリアルさんが少女を呼び戻して次の生徒が水晶に手をかざしていた。12歳くらいの少女はライカちゃんより眩しい光を放っていた。 「そのまま、波長を乱さないように。」  輝きが少し変化する水晶が一定の輝きに戻っていくのが判った。 「なおさん、ここを卒業した人で医術士になったり保育士になったり料理士になったり、色々な人達がいるのよ。ここは魔力を持った少女達に魔力の使い方と正しい心を教える所だと思ってるの。それは私達元生徒の願いと想いでもあるのよ。」  ソリアルさんの迷いも陰りもない透き通る声が私の気持ちを晴れやかにしていった。 「はい!」 少し張りのある声で私は返事していた。
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