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ティオと一緒にいた少し背の高い女性の視線が気になったが、大きな木の扉を抜けてソリアルさんの後を歩いていった。
(なんか嫌な視線だったな…)
最初ナムルさんと会った教会みたいな部屋の手前の通路まで戻ってきた私は、そのまま教会の裏に周るようになっている通路を進んで行くソリアルさんの後をついていった。
窓のないその通路は壁にある電球みたいな明かりで照らされている。
少し薄暗い通路を進むと、銀なのかよくわからないが装飾が施された扉で行き止まりになっていた。
ソリアルさんが手をかざしてなにか呪文みたいなものを呟いている。
扉がぼんやりと発光したように見えたと思ったら、触れてもいないのに奥へと開いていった。
「なんだろね…ここ…」
特別な場所なのだと、感じた私は小声でモカに話かけていた。
「うん。たぶん…」
そういって頭の上のモカは黙ってしまった。緊張しているみたいだった。
私は少し前を歩くソリアルさんに近づいて聞いてみた。
「この先の扉の向こうにナムル様がいますので、そこまで、行ってくださいね。私は入ることを許されていないので。」
「えっ?!」
目の前にはまた扉があり、これも銀色で凝った装飾の扉だった。
さきほどと同じように扉を開けたソリアルさんが私の歩みを促している。
「入ると下に行く階段がありますから気をつけて下っていってくださいね。少し濡れているところもあるので滑らないように。」
私はすこし明るくなっている扉の向こうを覗き込むような仕草で扉に近づいていった。
下へと下る螺旋階段だけが見えている。
覚悟を決めたわたしはソリアルさんに軽く会釈して扉を超えて階段を下っていった。
振り返ると扉が閉まっているのが少し見えた。
「行くしかないね。モカ、いくわよ。」
モカも頭から浮かびあがって、私の肩あたりを浮遊しながら下へと歩いていった。
岩壁から水が滴り落ちる階段は滑りやすくなっていて、ゆっくりと踏みしめながら私は進んでいた。
「モカ、さっき何言おうとしてたの?」
「うん。精霊の気配がするです。とても大きな息吹が感じるです。」
モカの緊張が私にも伝わってきた。
「じゃあ、やっぱりここって銀竜ナセラがいるところなのね。」
奥へと下って行くと私にも大きな気配と圧力みたいなものが感じられるようになっていた。
そこは大きな鍾乳洞になっていた。
岩のあちこちに無造作に生えている水晶が青白く輝いていて、大きな洞窟だけど見渡せるほど明るかった。
私がナムルさんを見つけると同時にナムルさんも私を見つけていた。
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