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「待っていましたよ。こっちへ来てください。」
「モカ、おいで」
腕の中へモカを呼び寄せて、私はナムルさんのところに歩いていく。
ナムルさんの後ろの青白く光る岩山が動いてるのが見える。
(うそ…あれがナセラ? おっきい~)
ぐいっと持ち上げた頭。青く光る二つの瞳がまっすぐこっちを見ている。
寝そべっている銀竜ナセラの胸元に女性が一人立っていた。
「あっ、ルミナさんだ。」
ナムルさんの隣に着いた私は銀色のドレスを着ているルミナさんに頭を下げて挨拶をした。
「ナムルさん…なんで私をここに呼んだのですか?」
まったく理解できない私はまず、根本的な問いを聞いてみる。
「ナセラ様がね、モカとあなたに挨拶したいって。」
「いや…挨拶って…そんな…」
(でかいし、怖いし。)
「さあ、ナセラ様の下に行ってくださいね。ルミナ様もお待ちですよ。」
銀竜ナセラの寝床は青白く光る水晶の照明とそれを反射する岩から染み出ている水滴で、幻想的な空間だった。
モカをぎゅっと抱き寄せてからゆっくりとルミナさんの所へ。
緩やかな上り階段になっている石段の壇上へと。一歩ずつ滑らないように。
(う~ん…)
「えっと、ルミナ様…おじゃましてます。」
何を言ってるのか自分でも判らない挨拶を済ませた私は、青い瞳の銀竜ナセラにも挨拶をした。
「はじめまして。なおです。…っと、モカです。」
圧倒的な大きさの銀竜ナセラを見上げる私に映った青い瞳は、威圧感がなくとても優しく暖かい瞳だった。
ルミナさんが私に手を差し伸べてきた。
「こちらへ。」
無意識に右手を出した私の手はルミナさまに引き寄せられる。
すっと、押される形になった私は、銀竜ナセラの胸元に位置している。
《幼き少女よ。我がもとにようこそ。》
声ではなく直接頭に響くその声は、深い男性の声で、渋みと威厳が伝わってくる。
モカを見て、そしてルミナさんを見た。
「モカ。聞こえてる?」
「うん。」
「ナセラ様の言葉は今、私達3人だけに聞こえていますよ。」
ルミナさんが戸惑っている私に答えてくれた。
「えっと、私は声を出してしゃべるの?」
「ええ、普通に会話するのと同じでいいですよ。」
銀竜ナセラの言葉が続く。
《精霊王からの言葉を伝えよう。我が息子を守ってくれてありがとう。そなたと我が息子の未来に祝福が訪れる事を願う。》
(えっ…精霊王? 息子? モカ?)
左手と胸の間にいる小さな友達を見た。
「モカ? の事だよね?」
モカはどこか恥ずかしそうに返事をした。
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