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おじさんの手前ですべての糸が止まって落ちた。そして振り上げた腕から空気を裂いた音が聞こえる。
(すごい。)
おじさんと蜘蛛の戦いを走りながら見ていた私は、モカを助けようと全力で駆けていた。
「モカー。今助けるからねっ!。」
私は蜘蛛の足元に転がっているモカを助けようと蜘蛛の足めがけて力いっぱい斧をぶつけた。
鈍い音とともに蜘蛛の足は砕け折れた。
(やった! 頭が下がった。)
私は振りぬいた斧と共に勢いよく回転して、頭めがけて斧を振りぬいた。
果物がつぶれたような感覚と共に私の顔や手、足に白い液体が飛散した。
(ぎゃっあ! 気持ちわるいぃ)
倒れた蜘蛛に斧を預けたまま私はモカを抱き上げて、巻きついている糸を千切ろうとしても切れなかった。
「大丈夫?」
「うん。」 といったモカはちょっと痛そうだった。
「待っててね。おじさんに切って貰いましょう」
私はモカを抱き上げておじさんの方を見た。
「ナオちゃん。家で待ってなさいって…ほら、服も顔も汚れてしまって、大丈夫かい。」
おじさんは悪戯した子供を叱るような口調で私の側まで歩いてきました。
「大切な友達なの、助けたかったの…ごめんなさい。」
私は抱きかかえていたモカをおじさんに見せる。
「そうか…。」
何か考え込むような表情で無言になっている。
「ぐぅ。ぐう~」
(うっ…お腹が。)
私は無意味に体を動かした。誤魔化せるはずも無いのに…
「お昼ごはんはお風呂の後だね」
おじさんはちょと笑いながら、私を見ていた。
「はい。」
私は力なくそう答えました。
突然後ろから太い嗄れた声が聞こえてた。
「その精獣を渡せ。そいつは災いを持つ者、わが主、ローデル様と契約するのが定め。お前ら人間の扱える物ではないわ!」
もう動かなくなっていた蜘蛛から届く声。
(なに? まだ生きてるの? こいつが喋ってるの?)
私は生気がない蜘蛛を少し下がって見て、同じようにおじさんも蜘蛛の方を見ていた。
「災いってなによ! 扱うってなに? モカは道具じゃないのよ! 誰がはい、判りました。って言うと思うのよ!」
動かない蜘蛛に向かって私は、
「モカはモカ! 選ぶのもモカ! あなたが決める事じゃないでしょ!」
私はモカをぎゅっと抱きしめた。
突然蜘蛛の体に黒い霧みたいなのが現れた。その瞬間、おじさんが私の間に割ってはいる。
「なおちゃん下がって。闇がくる。」
おじさんはまた何かつぶやきだした。
よく見るとおじさんの周りにも霧みたいなのが見える。ぼんやりと白い光がおじさんを包んでいた。
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