銀竜 ナセラ

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 頭に響くナセラの笑い声が私を脱力していく… 「もう、ナセラおじ様って呼ぶからね。き・ま・り・ね。」  ここが岩と水に囲まれた地下の洞窟って事を忘れるくらいその場には暖かい笑い声と空気が私を包んでいた。 《ああ。久しい。こんなに楽しい会話をしたのは。なお、逢えて嬉しいよ。そなたの道に月の恵みがあらんこと願う。》  私はこの世界に降り立ってからずっとこの洞窟で暮らしているナセラの事が気になった。 「おじ様は外には出ないの? ずっとここに居ないといけないの?」  水が流れる微かな音と、青く光る岩に囲まれた洞窟の中は翼を収めた大きな銀竜には似合わない風景だった。 《ありがとうよ。わしの役目はこの世界を闇から救おうと努力する人間達に力を分け与えるのが使命なんだよ。ここの岩は月からの魔力を蓄えることができるのじゃ。それをわしが吸収し大気に流すことで人間に魔力を与えているのだよ。》  そういった銀竜ナセラはゆっくりと首を持ち上げ、そして体を起した。悠々とした青白く光る竜は大きな息吹をひとつした。  洞窟の中は、空気の流れる圧力で大きな音と、岩と向こうに見えた大きな湖の水面を激しく動かした。  銀竜ナセラは私に目線を落として小さく微笑んだ。 《この湖を抜けると海に出るのだよ。わしもたまには動かないと翼が縮んでしまうからの。こっそりと散歩してるのだよ。》  背伸びをしたように見えたナセラはゆっくりと座り、最初みたときの格好に戻った。  静かになった洞窟で私は横たわる竜に声をかけた。 「ナセラおじ様。 お祖母ちゃんってどんな人だったの?」 《どこから話そうかの。そうじゃな、はじめてシェラと逢った時の事から話そうか。》  優しい瞳を見せるの銀竜ナセラが、記憶を懐かしむように語り始める。 《生まれて10日くらいの赤ん坊が、父親に抱かれてこの洞窟まで来たのだよ。洞窟全体に響く大きな泣き声でわしは目を覚ました。父親と泣き止まない赤ん坊にわしは声をかけた。何用かと。まあ、赤ん坊を感じた時に全て分かっていたのじゃがな。」  ナセラおじ様は、視線を私に向け、ゆっくりと話を続けた。 《大気にある魔力を無尽蔵に吸収していたのだよ。赤ん坊からは怖いと苦しいの感情が流れてきていてな、可哀想じゃった。このままだと赤ん坊は魔力に耐えられなくなり光となって消えてしまう事を父親に告げた。わしはそうなっても仕方がないと説明したのだよ。大きな力は災いになる恐れもある。それにこの子自身、幸せな人生を送れる事は無いだろうと。》  なにか気になったのか、私はルミナさんの方を見た。
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