ミレナの加護

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ミレナの加護

 地上に戻る岩の螺旋階段を、私はルミナさんとナムルさんと3人で一緒に上っていった。  モカは私の頭に上にいる。  なぜか私はルミナさんの手を握ったままだった。放すタイミングがなかったのと、別に嫌じゃなかったのもあり、ずっと手を繋いでいた。 「ティオはもう勉強のほう、終わったのかな?」  ルミナさんに聞くのでもなく、ナムルさんに聞くのでもなく、独り言のように私は聞いた。  そんな私に、後ろにいるナムルさんが答えてくれた。 「はい。もう教室でまっていると思いますよ。」 「そっか、私が待たせちゃったのか。」  私は手に握ったままの、500円玉くらいある大きな淡く光る宝石を見る。  よく見ると濁りのない透明な石だった。 (水晶かな? でも光ってるし。 服ってなんだろ…あっ。) 「ルミナ様、この石ってハミルさんの鎧とかと一緒のやつですか? 鎧を脱ぐときに光って消えるやつ。」  私の手を握ったまま視線を石に落としたルミナさんはすこし楽しそうに答えてくれた。 「ええ、そうですね。宝印石といって宝石の中に防具や武器を魔力によって閉じ込める物なんですけど、そのままだと持ちにくいので指輪にしたり首飾りにしたり髪留めにしたりするのよ。使い方は簡単です。着たいと念じるだけでいいのよ。戻すときは逆に脱ぐって思えばいいだけ。」  便利な物なんだと感心して、ふと着てみたくなった。 「今、着けてみてもいいかな?」 「着れないことはないけど、今着ている服に似合うかどうか。普通は選んだ宝石に、鎧やローブを封印するから、問題ないのだけれど。」  今着ている服は、ティオに借りた純白のすこし刺繍とレースが入ったドレス。上下分かれていて腰にはおじさんに貰った皮のカードホルダーが場違いな雰囲気を出していた。 「最初の試着は部屋に戻ってから服を脱いでしたほうがよさそうですね。そして似合う服を仕立てましょうか。」  私はどんな服が入っているのが早く知りたくて仕方がなかった。 「その宝印石もペンダントに施してもらいましょうね。それと、宝印石を貰った事は内緒にしておいてくださいね。」 「ティオにもですか?」 「ティオはいいのよ。ティオ以外の人には内緒にね。」  私は落とさないようにしっかりと宝印石を握り直し、スカートに付いていたポケットに入れた。   ルミナさんと手を繋いだまま、登っている螺旋階段が終わり私は入り口最初の扉のところでルミナさんとナムルさんと別れる。  手に残った温もりがすこし淋しい気持ちになった私はモカを頭から降ろして胸に抱きしめた。そしてティオが待っている教室に歩いていく。  
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