ミレナの加護

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 廊下の一番奥にある大きな扉の前に来た私は、扉を目前にあることに気付いた。 「ねえ…モカ。」 「はいです?」 腕の中にいるモカが小さく返事した。 「この扉ってどうやって開くのかな?」  私は取りあえず、ナムルさんがやったように手を出して扉を押してみた。  冷たい木の感触が手のひらに感じるだけで、何も起きなかった。 「開かないね…」  すこし考えてみる。 (中にティオは居ると思うから、叩いて呼んでみるか…) 「なおさん、お帰りなさい。」  廊下の奥からソリアルさんが歩いてきたのが見えた。 (よかった、ソリアルさんに開けてもらえそうね。) 挨拶をした私はソリアルさんと一緒に、ティオが待っている教室へと入っていった。  大きな円卓を挟んで窓側の椅子にティオが座って寛いでいた。 「おかえり、なお。」 「おまたせ、ティオ。」  挨拶を交わして私はティオの隣にいる背の高い女性に軽い会釈をした。  部屋には制服からドレスに着替えたティオと、薄い黄色のドレスを着た彼女だけが残っている。  彼女は私に自己紹介をした。  名前はマール・カルト。 ティオより5歳年上で遠い血縁関係になるらしい。ルミナさんのお祖父様の妹さんがマールさんのお祖母さんと教えて貰うが…当然判らなくなっていたので私は聞き流していた。    ソリアルさんが彼女の紹介の補足をするように私に話してくれた。 「今の生徒の中で一番安定した魔力と技術を持っているのよ。今度の月礼祭で卒業して巫女になるの。  マールさん、本当におめでとう。あと少しだけど、みなさんといい思い出作ってくださいね。巫女として忙しい日々に追われると思いますが、あなたなら大丈夫。期待していますよ。」  ティオも彼女を称えていた。 「そうよね。マールさんならすぐに王宮巫女にも銀礼の巫女にもなれますね。私もマールさんに負けないように頑張らないと。」  ソリアルさんが「そうしてください。」と言葉を挟むと、3人の笑い声が教室に響いていた。  私も小さく微笑んだ。  仕事に戻ると言ってソリアルさんが教室を出ていった。  静かになった教室でティオが私に聞いてきた。 「ねえ。ナセラ様にあってきたの?」 (えっ。 言っていいのかな? マールさんいるけど…)  私はちょっと戸惑ったけど、答えた。 「うん。会って来た。ちょっと怖かったけど、ルミナさんが居てくれたので大丈夫だったよ。」 「やっぱり、お母様いたのね。で、何か話したの?」  マールさんの視線が気になったが言える事だけ話してみることにした。
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