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「えっと。モカの話だけ、モカとなにか話してたみたいだけど、声で会話してなかったから。」
「ねっ。モカ。」
ティオに嘘を言うのが辛くなって私はモカに話を移した。
「ん? あ、はい。精霊界の話とか色々な話をしましたです。」
モカは私の気持ちを受け止めて上手に会話を終わらせてくれた。
「そっか~。でも会えるだけでも凄いよね。私はまだ会ったことないのよ。」
「ほんとうに羨ましいですね。ナセラ様と謁見できるのって数少ない人だけだから。」
ティオとマールさんの言葉で私は稀な体験をしたのだと今頃に感じた。
(そんなナセラ様をおじ様呼ばわりした事は言えない…)
「そうなんだぁ。モカが一緒だから会えたんだね。」
私はこの話題を早く終わらせたい思いで、つくろった言葉を発していた。
不自然な会話だとティオが察したらしく、私の顔を覗き込む感じで見つめているのが見えた。
だけど、初対面なマールさんはモカを見つめて私の会話に合わした。
「モカ様はこの国の宝ですからね。とてもお優しい方だと感じます。なおさんのお祖母様の頼み事とはいえ、契約者の側を離れるなんて凄いことですし、それに私達に接するお心が暖かいですし。」
モカも私もすこし驚いてマールさんを見た。
「あ、ありがとう。」
私は意味もない返事をしていた。
モカは照れているらしく腕の中でもそもそしていた。
「私もモカ様みたいな精獣と契約したいです。」
今度はティオがすこし驚いたようだった。
「え?! マールさん宝力ほしいの?」
「宝力というより、ルミナ様やいずれはティオを守ってあげれる力が欲しいかな。この街の皆さんも。」
「マールさんなら宝力なんてなくても出来ますって。私が保証します。」
「あなたに言われないでも、そのつもりよ。」
そういったマールさんの口元から笑い声が漏れ、ティオもマールさんの会話の口調が可笑しかったらしく、大きな笑い声を出していた。
私達は教室を出て、教会になっている広場を抜けて、青い絨毯を並んで歩いていく。
いつの間にかハミルさんが後ろを歩いている。
「ねえ、ティオ。ハミルさんっていっつもあんな感じなの?」
「私が話しかけない限り、あんな感じよ。」
後ろのハミルさんをちらっと覗いた私はティオとマールさんよりすこし前に出て、日が傾きオレンジ色になった空の見える門の外に飛び出した。
振り向いた私は、マールさんに別れの挨拶をして、追い着いたティオの腕を取って庭園へと続く道をすこし駆け足で歩いていった。
ハミルさんが離れないように駆け足で付いて来てくる。
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