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夕日に照らされた庭園に入った私とティオは、立ち止まり振り返った。
「一緒に歩かないとね。」
ティオに促して私は掴んでいた腕を放した。
「子供ね。」
ティオが皮肉めいた言葉を私にかけてきたけど、照れた顔を隠す笑顔が可愛かった。
鳥の囀りがなくなった静かな庭園を私は少し早足で駆け抜け、後ろを並んで歩くティオとハミルさんを中庭で待っていた。
「やっぱりお姫様と騎士様って無理なのかな?」
モカと私は庭園から出てくる二人を眺めていた。
「わかんないです。」
「そりゃそうだよね。」
私は小さく深呼吸した。
「お腹すいたね。」 何気に出た言葉だった。
「すいたです。」 モカは普通に返答した。
小さく笑っている私とモカを不思議そうに見ながら歩いてくるお姫様とナイト様が見えた。
「ティオー! ごめん、お腹すいた。」
近づく二人も小さく笑って私達4人は並んで歩いた。
城に戻り、長い通路から階段を上がってティオの部屋の少し手前でティオとハミルさんが止まった。
「ん? なに?」
「ここが、なおの部屋よ。食事があと少しで準備できるとおもうから、それまで部屋で待っててね。」
ティオの部屋から3部屋くらい手前の扉をハミルさんが開けてくれた。
暗くなった外を遮るように窓にはカーテンが閉められ、部屋には電球みたいに光る照明が天井や壁で灯かっていて昼のように明るかった。
部屋には大きなベットと小さなソファとテーブルがあり、西洋の高級ホテルのイメージがした。
「すぐに使いの者を呼ぶから言い付けてね。」
「あっ、そうね。ありがとう。」
私はティオの言われるまま、部屋に入ってモカと二人で待つことにした。
することもないので、私は銀竜のナセラおじ様から貰った宝印石を見ながらふかふかのベットに寝転んだ。
モカもつられてベットでゴロゴロしていた。
「色んな事があって疲れたね。」
モカも「はいです。」と返事をして私達はまたゴロゴロしている。
扉を叩く音がしたので私はベットから起き上がって扉を開けにいく。
ぐっと、木の扉を押し開けると、メイドさんが二人立っている。
二人とも、艶のある綺麗な黒髪をしていた。
(あっ、なんか落ち着くかも。)
私の変な視線にどう思ったのか、メイドさんの一人が小さな笑みを浮かべて声をかけてきた。
「お着替えの用意とお茶の用意をお持ちしました。」
私は「ありがとう。」と返事をして、扉の取っ手をメイドさんに渡した。
部屋へとワゴンを運んでいるメイドさん達を私はベットの横で立ちながら眺めていた。
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