ミレナの加護

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 私はまだクッキーを食べようとしているモカを見て。 「はい。お願いします。」  モカはまだ食べたそうだったけど、私はメイドさんに片づけをお願いした。 「これから、食事って言ってたし、お腹一杯にしちゃだめでしょ。」  小さく笑いながら私は、モカの頭を撫でた。  片づけを終えたメイドさんたちが扉から出て行くのを見送って、私はカーテンが架かっている窓から外を眺めてみた。  もう暗闇が空を覆い尽くしていたけど、大きな銀色の丸い月が白い城壁を淡く照らしている。 「いまさらだけど、凄いところに来たんだな~。」  見慣れない月を眺めながら私は一人、呟いていた。  モカが私の横に来て窓の縁に座った。 「ボクも人界って初めてです。」  私はモカの言葉を聞いて、 「そうよね。モカも初めてなんだよね。色々行って見たいけど怖い気持ちも一杯あるよね。あと9日なのか~。」  モカを抱きかかえて、私は城壁の上に拡がる街の灯火に目線を移す。  声は聞こえないけど人々の活気が伝わってくる感じがした。  扉を叩く音がしたので私は返事をした。  開けられた扉の隙間からティオが笑顔とともに飛び込んでくる。 「なお~いくよ~。」  私はそんなティオを見て、元気になっていくのが判った。  ティオは濃いピンクのドレスに白い上着とスカートのセットを着ていた。上着とスカートには薄いピンクの花の装飾が施されている。 「なお。やっぱりドレス似合ってるね。」  ティオに「ありがとう。」と返事をして、 「こういう服って今まで着た事なかったのよね。」 「なおはいつもどんな服着てるの?」  私はいつもの風景を思い出していた。 「色々よ。学校の制服とか、暖かい日はシャツと、ジーンズっていうズボンで、寒い日にはセーターとか色々。」  ティオがよく分からないって顔をしながら考えていた。  私は、ティオが制服を来ている格好を想像しながら答えた。 「絵にして今度見せてあげるね。」 「お願いね。」 ティオの顔が笑顔に変わっていた。  私はモカを抱いてティオと共に部屋を出た。外には一人のメイドさんが待っていた。さっき扉を開けたのは彼女だったようです。 「あれ? ハミルさんは?」  私はいつも一緒にいると思っていた護衛のナイト様が居ないのが気になった。 「今日は、もう外出もしないし来客も来ないので宿舎に戻ってるの。ずっと一緒だと彼の時間が無いでしょ。」  私は「そういや、そうね。」と答えてメイドさんの後をティオと一緒に歩き出した。  ティオがそのまま言葉を続けた。
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