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だけど騎士は何も無かったように私の横を通りすぎていく。
(え…無視?)
騎士はおじさんの隣までいっておじさんと目を合わしたと思ったら、腕を燃えている木に向けた。
「ヴァルド!」
叫ぶ騎士の手から火の玉が現れて一直線に飛んでいくと蜘蛛に当たり、轟音と共に燃え崩る。
それは蜘蛛がおじさんに向かって襲ってくるところだったようで、蜘蛛は炎に包まれながら動かなくなった。
私はゆっくりとおじさんと騎士に駆け寄り、改めて騎士にお礼を言った。
「あの、ありがとうございました。」
私はやっと騎士の顔を見ることができた。
(えっ…女の子だ。私とおなじくらいの女の子だ。)
きれいな赤い髪がとても印象的だった。
「逃げたようね。何があったのですか?」
私は蜘蛛が襲って来た事、モカを狙って来た事を話そうとした。だけどおじさんが私の前に割って入り会話を止めた。
「ありがとう、ミリアちゃん。話は家でどうかな。久しぶりに会ったんだし、それに、この子を早くお風呂に入れてあげたいからね。」
そう言って二人の視線は私に向けられた。
(うぅ…)
「…そうですね。そうします。おじ様」
(知り合いだったのね。)
ミリアちゃんと呼ばれた彼女はちょと驚いた顔をして、そしてちょっと笑っていた。
彼女は乗ってきた竜の頭をなでてペットに話かける口調でおとなしく待っていなさいって、言い聞かしていた。
(すごいな~すごいな~すごいな~)
もう色んな事が起きすぎて、私の思考は好奇心と期待でいっぱいだった。
家に入ると、おばさんが何事も無かったかのように、お茶と香ばしいクッキーをテーブルに並べていた。
(うっ、お腹すいたぁ)
「ぐぐぅ~」
私は正直なお腹を、抱きかかえていたモカで隠すようにおじさんたちを見た。
「まずは、お風呂が先ね」 お茶をいれていたおばさん。
「さ、その子をこっちに」 糸が巻きついたまま気絶しているモカに手を伸ばすおじさん。
「クッキー美味しそうね」 纏っていた鎧が光を放ちながら収縮して服の姿になったミリアさん。
3人ともこっちを見て面白そうに笑っていた。
「クッキー…残して置いてください。」
恥ずかしさを誤魔化しながら、私はモカをおじさんに渡して私は浴室に走っていった。
木の香りが心地よい湯船に、私はゆっくりと浸かっていた。
目を閉じて、手を伸ばして深呼吸。体が疲れていたのがわかる。色んな事が頭に浮かんできた。
(もう、なにがなんだか…異世界…精獣…大きな蜘蛛…魔法…竜…おとぎ話の世界だよ。)
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