銀竜 ナセラ

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私は銀竜ナセラに向かって、 「いえ、私は何も出来なかったんです。守ってくれたのは私のおじさんとミリアっていう竜騎士さんなんです。 私はただ、空から落ちてきたモカを助けただけなの。」   あの時の悔しさがまた込み上げてきた。 《力で守るのが全てではないぞ。幼き少女よ、そなたの想いと行動で聖獣の子は守られたのだよ。恥じることはない。これからもその子を守ってやってくれ。私からもお願いする。》  私は少し深呼吸して「はい。」と答えた。  気持ちを強く持って頑張ろうと思った。 「ねえ。モカ? 精霊王の息子って?」 「僕達はみんな精霊王アンリエール様の下で育てられてます。」  私は家出みたいに出てきたモカを見つめて、 「ちゃんとモカのこと見てくれてるんだね。」  モカが少し照れている。 (精霊界に戻ったほうがいいのかな? やっぱり…)  モカのために…  私は答えの決まらない心の気持ちと格闘していた。 《少女よ。》  考え事でぼーっとしていた私は銀竜ナセラの呼びかけで意識を戻した。 「あ。はい。」 すこし慌てた声で返事をした。 《魔力が欲しくないか?》 「えっ…」   私はおじさんやミリアみたいな魔法が使えるようになるのかなっと期待したけど…  銀竜ナセラの言葉はさらに続いた。 《望むなら、特別に力を与えようと思うのだが、ルミナくらいの力くらいなら今すぐにでも。》 「えっ!」  私は多分この国一番の魔力があるとおもうルミナさんを見つめた。 「どうするかね。ただ髪の色が私と同じ銀色になるがの。」  私は今、もの凄い選択の場面に立っているのだと感じた。そして銀竜ナセラの目をしっかりと見つめた。 「要らないです。」 強く断った。   銀竜ナセラはすこし目を閉じて、そして言葉を続けた。 《その聖獣の子を守る力は要らないのかね。先の未来で力なく後悔する時が来ても良いのかね。》  私は腕の中のモカをぎゅっと抱きしめ、はっきりと答えた。 「はい。モカを守る力は欲しいです。力がなく悔しいと思うこともありました。でも、自分の力で守りたいの。貰った力じゃなくて、自分で頑張った力で守りたいの。じゃないと守っても守れてないっていうか…今、頑張ってるティオや皆さんの努力を踏み躙ってるようで…それにそんな大きな力を貰ったら…私の心が…挫けそうで……」  語る言葉が弱々しくなっていく。 「私に力がなくてもモカを大切に思ってくれる人が絶対守ってくれると思うし…私も頑張るし…」  言いたい事がまとまらなくて言葉が詰まった。 《人任せか。》  ナセラの言葉が胸に刺さった。  私は銀竜ナセラを見上げて強い声で答えた。
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