三年後で君を待ってる

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 目が覚めると隣に知らない女がいた。 「おはよう、○○君」 「誰ですかどうやって入ったんですか警察呼びます」 「ちょちょ、待って待って!」  待てない。不法侵入罪だ。なんで僕はこんなに冷静なんだ。  僕が寝ているベッドの隣であたふたとしている女は、長い黒髪がきれいな若い女だった。  若いとはいっても僕よりは年上だろう。少し無邪気そうな顔をしているが、大人っぽい艶やかさも節々にあった。 「警察は……良くないかなぁ?」  なにが「良くないかなぁ?」だ。ちょっと美人だからってこんな狼藉が許されると思って―― 「ね? お願いっ!」 「三分間猶予をやろう」  小首をかしげるしぐさがとてもかわいかった。 「……目的はなんですか。というか鍵掛かってましたよね」 「うん、本当に君は戸締りしっかりするよね」 「むしろ鍵かけない人のほうがおかしいです」  古びたアパートの一室。さして金目のものがあるわけではないが、近頃物騒だし、あえて鍵をかけない意味もない。 「目的かぁ。目的はあるにはあったんだけど、なんか君の顔を見たら満足しちゃったっていうか」 「じゃあ帰ってください。僕は二度寝したいので」 「ホントに君は寝るのが好きだねぇ」 はじめて会ったのに物知り顔で彼女が言う。 「ところで君、どんな女の人がタイプ? 見た目の好みとかでもいいよ?」  急になんだ。まさかそれが目的だったのか。さては新手のストーカーか。 「……特にないです」  ここで「あなたの容姿が好みです」なんて言ったらさらに粘着される。 「そもそも僕は誰かを好きになっていいような人間ではないので」 「うん? どういう意味?」 「僕はさして価値のない人間だから」  人に誇れるようなものを持っていない。  なにも与えられないし、たぶんなにも救えない。  どこまでも平凡な僕は、誰かを好きになるべきではない。 「そんなことはないと思うけどなぁ」 「あなたに僕のなにがわかるんですか」 「全部わからないけど、わかることもたくさんあるよ?」 「さっきからどういう――」  抗議しようとしたところで、ふいに彼女が僕の体を抱きしめた。 「あはは、まだわたしのほうが大きいね。無理言ってあれを買ってもらってよかった」
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