マジコリサマ

12/12
前へ
/12ページ
次へ
「ねえ先生、マジコリサマって信じる?」 「ああ、信じるよ」  それから、金澤はマジコリサマをしている子供たちを見かけても、止めることはなくなった。  衛藤は、退職した。体を壊して、これ以上教鞭を振るうのは無理だという話であった。  目の前を走り抜けた黄色い帽子の生徒たちが、楽しそうにはしゃいでいる。 「マジコリサマ、マジコリサマ」  幼い子たちは無邪気に笑う。その言葉がどんな意味を持つのかも、分からないのだろう。  金澤は、耳を塞いだ。  この学校は、あと五、六年で廃校になる。  だからきっと、この「あそび」も。そう、マジコリサマも、この幼い子供たちの卒業とともに、いなくなるはずなのだ。  いなくなる、はずなのだと、  そう、信じている。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加