マジコリサマ

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マジコリサマ

 その『あそび』を知ったのは、金澤が赴任してすぐのことであった。  金澤は小学校の教諭である。勤続十年。以前は都内一等地の学校で、やたらハイソな小学生を相手にしていたが、この度異動になったのは、ギリギリ東京といえるであろう、山奥の学校であった。  山を背負うようにして、何とか建っているという風情の校舎は、随分と古かった。聞けば、あと五、六年で廃校になるのだという。 「生徒数もね、少ないんですわ」  学校を案内してくれたのは、同学年を担当する女性教師であった。金澤よりも若い。恐らく二十代半ばから後半、といったところであろう。衛藤と名乗ったその女性は、眼鏡をくいと持ち上げた。 「金澤センセ、東京の学校から来たんでしょう?」 「東京、って、ここも東京でしょう」 「そやけどねぇ、センセ、ここん人はみぃんな、東京とここはベツモンやと思てますよ」  衛藤には独特の鈍りがある。恐らく西の方の出身なのだろう。聞けば彼女も去年異動してきたばかりで、二年目なのだという話であった。     
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