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01 姫さらわれる
氷の歌姫。その歌声には冷気を帯びる。
だが彼女の意向で暖房器具はなく、舞台と観覧席を遮るものもなく、密室の会場。だからそこは凍える寒さであった。観客たちは防寒具に身を包み震える寒さのなか、それでも彼女の歌声にうっとりと聞き惚れていた。
ヒロもまたその一人。彼女を見たときから一目惚れで熱中的なファンの一人として彼女を追いかけていた。今日もまた彼女の舞台に足を運んだ。
だがしかし、この寒さは堪える。たとえ防寒具に身を包んでも忍び寄る寒さ。ブルッと来たのは催したせいだ。だが我慢。
彼女は舞台上で妖艶な視線を投げかけては歌を歌っている。その吐息から冷気を吐き出しつつ。彼らはそれにまた聞き惚れていた。
だけど我慢をこらえきれずに外に出るヒロ。トイレへと向かった。
帰ってくると扉がビクとも動かない。触ると冷たい氷漬け。音も聞こえない。なんだか様子が変だと思いつつも、中へと戻りたい。押しても引いても開かない。だがタックルをかましてどうにか扉をこじ開けた。中に入ると、そこには……。
氷漬けの観客がいた。
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