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そして巨大な人影、それは氷の巨人。寒々とした青いマント。頭には青銅色の王冠。青色の長いひげを生やした巨人。氷の歌姫をその手に捕らえていた。
彼女は助けを乞う。
「助けて!」
それが彼女の最後の言葉だった。
巨人は彼の存在を気にもとめることもなく、天井を突き破り空へと去る。
その場に膝折れて立ち尽くす。
でも思い出す、彼女の最後の言葉を。勇気と義憤に駆られて彼は行動を起こす。だがしかし、どうすればいいのか?
ヒロの頭に浮かんだのは博士の存在だった。彼ならばこの状況を打開してくれるはず。そう思い研究所へと走る。
博士の研究所へ全力疾走。
たどり着いた。息は上がる。それでも散り散りの言葉で伝える。
椅子に座る博士の後ろ姿。それに言葉をかける。椅子が回転。振り返ると、そこには長身体躯で精悍な顔つきの男がいた。眼鏡をかけ白衣の姿。
「どうしたんだい、そんなに慌てて? ヒロくん」と博士は言う。
そして背後から宙に浮かぶものが現れる。それはタヌキだかキツネだかの中間、ハイブリッドな存在。そんな謎の生物が宙に浮いているのだが、ヒロは別に驚きはしなかった。
名前はラコン。
ラコンは言う。
「おまいさん、コンサートに行ってたんじゃなかったのかぇ?」
「う、歌姫がさらわれた!」
「はぁ、またですか……」と博士はそれだけを述べる。
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