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「柏木さん、落ち着いて? みんな、リビングにいらっしゃい」
背後から母親が現れた。
桜子とは真逆の落ち着いた登場に、光一は我に返った。
「え、なんなの? なんで柏木? 本当の事ってなんだよ」
「だから、それを話しにわざわざ来てくれたんでしょう? 今からリビングで落ち着いて聞きましょう」
まるで自分に言い聞かせるかのような口調に、光一はハッと身を引き締めた。
柏木の突然の訪問に最も緊張しているのは、他でもない母なのだ。
今、この家にもたらされる『本当の事』は、父の事件に関係するに決まっている。
『実は私、人間じゃないんです』などと告白されても、この家に一輪の波紋すら生じない。
そのことを、誰もが知っている。
だから母は、誰よりも緊張しているのだ。
光一は立ち上がった。
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