ファーザー

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  見張り役は下っぱだと相場が決まっている。 しかも一人ならば、どうにかなる。 泰臣は、普段の自分からは想像も出来ない野太い声で、少年を威圧した。 自分は警察官で、あの少女が以前かつあげにあっていた所を助けた。 偶然見かけた今、今度はお前達が少女を連れて行った。 何をする気だ? まだ幼さの残る少年は、自分は単なる見張り役なので、何も知らないと怯えた。 ならば黙ってこの場を去れと一喝し、泰臣は急いで奥へと走った。 路地裏で展開されていたのは、泰臣がこの世で最も嫌う、虫酸が走る行為だった。 猿ぐつわをはめられた少女の両手を、男2人がかりで抑え込み、制服を剥ぎ取る最中だった。 一気に怒りが達した泰臣は、その場に突進した。 不意をつかれた男達は一瞬怯んだものの、相手が痩せた中年だと分かるや、すぐさま襲い掛かってきた。 喧嘩など、生を受けて46年、一度も経験したことがない。 最初から、勝てるとは思っていない。 それでも逃げるわけにはいかない。 ならば、自分が出来ることは、男達の汚ない手から、この少女を守ることだけだ。 もみくちゃになりながらも、なんとか上着を脱いだ泰臣は、それを少女に被せ、猿ぐつわをむしり取ると同時に、自分も少女を囲うようにうずくまった。 背中を丸め、締め付けないようなるべく空間を作り、この華奢で小柄な少女を覆い尽くした。 やめて、やめて、おじさんが死んじゃう。 自分の上着の下から、か細い声が必死に懇願する。 泰臣は、その声を無視して、他のことを考えていた。
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