4人が本棚に入れています
本棚に追加
見張り役は下っぱだと相場が決まっている。
しかも一人ならば、どうにかなる。
泰臣は、普段の自分からは想像も出来ない野太い声で、少年を威圧した。
自分は警察官で、あの少女が以前かつあげにあっていた所を助けた。
偶然見かけた今、今度はお前達が少女を連れて行った。
何をする気だ?
まだ幼さの残る少年は、自分は単なる見張り役なので、何も知らないと怯えた。
ならば黙ってこの場を去れと一喝し、泰臣は急いで奥へと走った。
路地裏で展開されていたのは、泰臣がこの世で最も嫌う、虫酸が走る行為だった。
猿ぐつわをはめられた少女の両手を、男2人がかりで抑え込み、制服を剥ぎ取る最中だった。
一気に怒りが達した泰臣は、その場に突進した。
不意をつかれた男達は一瞬怯んだものの、相手が痩せた中年だと分かるや、すぐさま襲い掛かってきた。
喧嘩など、生を受けて46年、一度も経験したことがない。
最初から、勝てるとは思っていない。
それでも逃げるわけにはいかない。
ならば、自分が出来ることは、男達の汚ない手から、この少女を守ることだけだ。
もみくちゃになりながらも、なんとか上着を脱いだ泰臣は、それを少女に被せ、猿ぐつわをむしり取ると同時に、自分も少女を囲うようにうずくまった。
背中を丸め、締め付けないようなるべく空間を作り、この華奢で小柄な少女を覆い尽くした。
やめて、やめて、おじさんが死んじゃう。
自分の上着の下から、か細い声が必死に懇願する。
泰臣は、その声を無視して、他のことを考えていた。
最初のコメントを投稿しよう!