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桜子が今後どうするかは、本人次第だ。
「片桐」
帰り際、桜子が光一を振り返った。
「なに」
「私、守られてる間ずっと、本当に温かくて、今でもあのぬくもりが忘れられない。ずっと返せずにいたけど、これ」
差し出された紙袋の中には、あの日父が着ていたという上着が入っていた。
「遅くなってごめんね」
「柏木が悪いわけじゃない」
「分かってる。でも」
「父さんも、柏木に謝らせたくないはずだし」
「分かってる、けど、何て言えばいいのか」
「何も言わなくていい」
「……ありがとう」
「それなら、届けてもいいかな」
天国の父に。
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