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翌日の月曜日、光一は登校してすぐに、嫌な場面に遭遇した。
靴箱で一緒になった桜子が、数名の上級生の男子に声を掛けられた。
「柏木桜子」
「え? 誰?」
「ふーん、まあ、なかなか」
「これなら楽しめそうだな」
彼らは、到底好意的とは言えない笑みを浮かべてそれだけ言うと、ドカドカ去って行った。
桜子は平然としたもので、光一などに見向きもせず、何事もなかったように上履きに履き替えていた。
光一は密かに頭を抱えた。
以前あんな場面に出会した立場上、不安にならざるを得ない。
この間は女子対女子だったけれど、今回は相手が数名の男子だ。
この上級生の登場も、不戦敗に終わった女子が焚き付けた結果だと容易く想像がつく。
ふと、昨日の父の言葉を思い出す。
心は強いが、力は弱い。
心がしっかりしている分、力でねじ伏せられる屈辱は計り知れない。
桜子に個人的な感情は、最初から何もないのだが。
これは危険な予感しかしない。
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