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学校に行かなくなってからは、心配する光一の友人が何度も様子を見に来た。
話すことは他愛もない日常で、光一をリラックスさせるものばかりだった。
ただひとつ、テレビ番組の話になると、光一は一言で遮った。
「テレビは見てない」
憶測だらけの出鱈目な言葉が交差する報道番組は、こりごりだった。
父のことなど、なにも知らないくせに。
「なあ、光一」
ある日、いつになく神妙な表情の友人が、意を決したように光一を見た。
「あのさ、お前の親父さんって……」
「なんだよ、言えよ」
口ごもる友人に、光一は鋭い眼光を投げる。
一瞬怯んだものの、我慢できない風情で呟いた。
「いい人だったんだな」
「……は?」
思いもよらない言葉に、光一は間の抜けた反応を返す。
「すっげー優しくて、親切だった。なんつーか、あったかい人だった」
「な、なんで?」
光一の戸惑いに、部屋の片隅で埃を被ったテレビに視線を投げ、友人は語った。
父親の遺体が発見されてから連日、各報道番組では、光一の嫌う憶測や推理合戦が繰り広げられた。
そんな中、生前に父親と交流のあった人物のインタビューも数多く流れた。
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