【二】

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 まぶしい太陽の光と、鳥のさえずりで目が覚める朝。かたわらには無防備な顔で寝ている、一番好きな人。  モンスターの討伐で生計を立てていた二人が拠点にしていた村。のどかで、住む人達も皆、親切だった。  お気に入りのパン屋を営む夫婦はなんでも相談に乗ってくれる頼もしい人で、神への信仰と戦い方しかしらないメイリアに、たくさんの事を教えてくれた。  夢と希望しかなかった日々。パン屋の夫婦のような仲睦まじい生活が待っているんだとメイリアは信じてやまず、この幸せを与えてくれた神に心から感謝した。  だがある時期から、些細なことでケンカが増えるようになった。自分の気持ちを分かってくれないセイン。何度も衝突した。その度に神に祈り、パン屋の夫婦にも相談した。けれどその溝は、最後まで埋まらなかった。  ある日の明け方。セインは旅支度をしていた。メイリアが寝ぼけ眼で尋ねると、単独で討伐の依頼が入ったという。 「気をつけてね……」 その言葉が、彼にかけた最後の言葉になった。 (あの時……) いつものように、終わりの無い自問自答の迷路にはまりそうになった時、メイリアを現実へと引き戻したのは、頭に落ちてきた鳥のフンだった。手に付いたそれを見つめ、鳥を恨めしく見上げた。  メイリアは小さく息を吐いた。そして、心の中に一人の少女の顔を思い浮かべた。ここにはいない、大切な人の顔を。
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