【二】

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【二】

 セインがいる場所から百五十メートルほど離れた岩場。周囲の風景に溶け込む装束に身を包んだ神弓の射手、メイリアはそこにいた。  一射目ではセインだとは分からなかった。『アルテミスの瞳』を使わずとも狙える距離だったからだ。だが、どこか見覚えのある風貌が気になって矢文を飛ばした。判断は正解だった。  分は圧倒的にメイリアにあった。メイリアにはセインの位置は丸分かりの上に、向こうにはこちらの弓に対抗する手段も無い。そして毒もある。  だが一つだけ気がかりもあった。彼があれだけ大物のドラゴンを一人で仕留めたということだ。セインは弓を使えない。だがあの表皮の固いドラゴンを仕留めるのは容易ではないはずと考えていたからだ。 (神よ、あなたは私にどれだけ試練を与えれば気が済むのですか……)  組んだ両手の間で持った弓に額を当て、神に祈った。天を仰ぐと大きな鳥が悠々と天を舞っていた。 (もう一度、あんなふうになれたら……)  メイリアがこれまでに何度も思ってきたことだった。この言葉をつぶやく時、決まってセインの顔も一緒に思い浮かんだ。それは、メイリアが一番、自由で自分らしく、幸せに過ごしていた時。
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