過去

3/4
前へ
/9ページ
次へ
ある日、突然母から父の余命を聞かされた。 泣きながら説明をする母に、私は普段話を聞くときと同じように相づちをうった。 『あと一週間』 残酷な言葉が頭の中をふわふわとめぐる。 ありえない。 意味がわからない。 悪い冗談ではないかと思った。 お父さんが…死ぬ? 何それ。 嘘だ。そんなの嘘に決まってる。 先生の診断が間違ってるんだ。 涙が出そうになるのをぐっとこらえた。 泣いたら余命を受け入れたことになる気がしたから。 それにまだここは病院。 父に涙を見られるわけには行かない、絶対に。 その後、病室では努めていつもより明るく振る舞った。 でも、夜が来ると涙があふれてくる。 真っ暗な自室で誰にも気づかれないように泣いた。 涙は拭いても拭いても止まらない。 山のように積まれていくティッシュ。 いつしか泣き疲れて寝ていた。 そんな日々が毎日続いた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加