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餡炊き三年、餡練り十年
連日、真夏日を記録し続けている暑い七月だった。にもかかわらず、なるべく冷房を入れないよう自粛する空気が国中を覆っていたあの年のことである。
何もかもが崩れ、飲みこまれたあの日から四か月を告げる夜が明けたばかりだというに、温度計は28℃。30℃を超えないと入れないと話し合って決めていたエアコンだが、今日も太陽が上りきる前に稼働されるだろう。
築三十年、5LDKの外は夜が明けていたが、そのリビングにある小型テレビの向こうはまだ前日の夜である。画面の右上に白くアナログと表示された大型のブラウン管は、あと半月で電波を受信できなくなる。ここでの生活が始まった頃はリモコンの奪い合いが毎日のように繰り広げられたが、今はそれぞれの部屋に小さなテレビがあるのと、この家がもうすぐ取り壊されるので新しいデジタルテレビは買わないことにしていた。
その片隅には、古ぼけたサッカーボールが一つ。台所や玄関、廊下、トイレにまでこの家にはボールが置かれている。デザインや大きさはまちまちだった。
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