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にわか雨はものの数分で止んだ。
長老が宮司に平謝りをしてから、再びマイクを持つ。
「えー、寛大な処置をいただき、特別に、五分間だけ、一人鞠を奉納させていただける運びとなりました」
そう言うと汗を拭きつつ手元の腕時計に目をやる。三時五分前だった。
そんな悶着など他人事のように、禿が庭の最も本殿に近い隅で鞠に立つ。
懸、庭の四方に立つ四本の木は正しくは艮(うしとら、北東)に桜、巽(たつみ、南東)に柳、坤(ひつじさる、南西)に楓、乾(いぬい、北西)に松を植える。それぞれ春夏秋冬を代表する樹木であり、このため懸は四季とかけて式木とも呼ばれる。また蹴鞠をすることを木の下に立つと表現し、それだけ四本の木が蹴鞠と切り離せないものであることがわかる。
だからこの挑戦のスタートは春を意味する艮の方角から始まる。拳の幅ほどの砂利の山から足を踏み外すことなく鞠をついたまま移動するさまをごろうじろというわけだ。
禿が右の足で蹴鞠る。小刻みに上下動する鞠に見いるその顔は青ざめ、爪先の神経までも研ぎ澄ませているのが誰の目からも明白だった。
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