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「アズキ、生菓子と上生菓子って何が違うん?」
今度はやよいから問いかけた。
「まず干菓子と生菓子はわかる?」
「そういうんが干菓子やんな」
そう言って杏木の口の周りを汚したうなぎパイのかけらを指差す。
「せや。菓子は生菓子と干菓子、いわゆる乾きものに分けられる。ちなみにうちの店は干菓子は置いてへん。なぜなら」
「御所さんの西やからひがしはない、やろ。百万遍聞いたわ」
静岡茶のペットボトルをあおる杏木。パイに口の中の水分を根こそぎ持っていかれた。
「せやから、なんで草餅や花見団子は上生菓子とは言われへんねん」
「草餅はよもぎの葉っぱが細かくなってるし、花見団子はそれを見ただけでいつ食べるかわからんやん。パッと見て、それが何の季節を表してるかわかるんが上生菓子。材料に旬のものを使ってへんくても、梅や桜の花の形をしとったらいつのお菓子かわかるやろ。そういうの、見立てって言うんや」
「見立てって、見立て殺人の見立てか」
そう言いながら小まめにメモを取るやよい。
「そんなん知ってどないすんねん」
「いつか和菓子職人の役が来たら役に立てんねや」
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