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「サクラ、あんた面談、なに聞かれてん?」
杏木がわずかな停車時間を縫って湯がいてもらったきしめんをたぐりながら尋ねる。
セレクション合格通知が送られた後、選手と保護者が東京に呼ばれ、監督と話し合いをそれぞれ持った。
藤原家は首都圏の交通機関に慣れた父の賢太郎が店を休んで上京した。聞かれたことと言えば、住まいはどうするかということ、あとキーパーをやる気はないかと聞かれた。
セレクション前に提出した申込書にはサッカー歴やポジション、利き脚に加え両親の身長を記入する欄があった。父は182、母は171センチ、杏木自身も現在165センチでまだ伸びている。だが断った、鞠は足でいらうものだと。
「試合と撮影、重なったらどないするて」
桜井やよいは、関西ではそこそこ顔の売れた子役である。大阪の児童劇団に所属し、関西のテレビ局が製作するドラマやバラエティ番組にちょくちょく出ていた。
「試合に出してくれるんやったらサッカー選びますって答えたったわ」
「強気やな」
「子役はな、二度売れなあかんねん」
ほほう、とうなずく杏木だがあまりよくわかっていない。
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