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鼻歌交じりに歩いていると、見えてきたのは黄色い屋根の小さな家。
決めた、次はこのおうち。
コンコン、ドアをノックして、深呼吸して声を出す。
「こんばんは、ぬくもり宅急便です!!」
扉が開いて出てきたのは、べソをかいた男の子。顔も体も痣だらけ。
おうちの中はお酒臭い。テレビの音と怒鳴り声が響いてる。
「…お兄さん、誰?お父さんのお友達??」
「違うよ。僕は、ぬくもり宅急便。人にぬくもりを届けるんだ。キミにもあるよ、届けもの。今出すから、待っててね。」
持ってた袋をゴソゴソ漁ると、出てきた出てきた。この子にぴったりな『ぬくもり』が。
大きな棺桶を床に置くと、少年は恐る恐る蓋を開けた。
その中から出てきたのはエプロン姿の長い黒髪の女の人。肌は茶色く腐り果て、骨と薄っぺらい皮だけで繋がっている。
女性はゆっくりと起き上がり、手を伸ばしたかと思えば、そのまま少年の背中に腕を回した。
「ママ!!!!」
少年は途端に泣きじゃくり、その女性を強く抱きしめ返した。
女性の背中が、ぼきり、と音を立てる。
彼女はにっこりとわらった。
「ひろくん、愛しているわ。」
「ママ!!!!やっぱり、ママが死んだなんてお父さんの嘘だったんだね!!!僕、ずっとママが帰ってくるのを待ってたんだよ!!!」
少年が更に強く抱きしめると、女性の右腕がちぎれた。
彼女はにっこりとわらっている。
「愛しているわ。ひろくん、愛しているわ。」
口を開く度に、女性の唇が、喉元の皮膚が、ぼろ、と剥がれ、それと一緒に目玉が飛び出して床に零れる。
「ママ、ママ!!おかえり!!」
彼女はにっこりとわらっている。
「愛しているわ。ひろくん、愛しているわ。愛しているわ。愛しているわ。愛しているわ。愛しているわ。」
ぼろぼろ、ぼろぼろ、女性の体は崩れ続ける。
「もう、僕を置いて居なくならないでね!!」
ブチン、と女性の首がねじ切れて床に転がった。彼女はその状態のまま、口を動かした。
「ずっと、一緒よ。」
彼女はにっこりとわらっている。
大好きなお母さんが帰ってきて、男の子はとっても嬉しそう。
よかったね、よかったね。
喜んでもらえて、僕もとっても嬉しいな。
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