あなたにぬくもり、届けます。

4/5
前へ
/5ページ
次へ
鼻歌交じりに歩いていると、見えてきたのは黄色い屋根の小さな家。 決めた、次はこのおうち。 コンコン、ドアをノックして、深呼吸して声を出す。 「こんばんは、ぬくもり宅急便です!!」 扉が開いて出てきたのは、べソをかいた男の子。顔も体も痣だらけ。 おうちの中はお酒臭い。テレビの音と怒鳴り声が響いてる。 「…お兄さん、誰?お父さんのお友達??」 「違うよ。僕は、ぬくもり宅急便。人にぬくもりを届けるんだ。キミにもあるよ、届けもの。今出すから、待っててね。」 持ってた袋をゴソゴソ漁ると、出てきた出てきた。この子にぴったりな『ぬくもり』が。 大きな棺桶を床に置くと、少年は恐る恐る蓋を開けた。 その中から出てきたのはエプロン姿の長い黒髪の女の人。肌は茶色く腐り果て、骨と薄っぺらい皮だけで繋がっている。 女性はゆっくりと起き上がり、手を伸ばしたかと思えば、そのまま少年の背中に腕を回した。 「ママ!!!!」 少年は途端に泣きじゃくり、その女性を強く抱きしめ返した。 女性の背中が、ぼきり、と音を立てる。 彼女はにっこりとわらった。 「ひろくん、愛しているわ。」 「ママ!!!!やっぱり、ママが死んだなんてお父さんの嘘だったんだね!!!僕、ずっとママが帰ってくるのを待ってたんだよ!!!」 少年が更に強く抱きしめると、女性の右腕がちぎれた。 彼女はにっこりとわらっている。 「愛しているわ。ひろくん、愛しているわ。」 口を開く度に、女性の唇が、喉元の皮膚が、ぼろ、と剥がれ、それと一緒に目玉が飛び出して床に零れる。 「ママ、ママ!!おかえり!!」 彼女はにっこりとわらっている。 「愛しているわ。ひろくん、愛しているわ。愛しているわ。愛しているわ。愛しているわ。愛しているわ。」 ぼろぼろ、ぼろぼろ、女性の体は崩れ続ける。 「もう、僕を置いて居なくならないでね!!」 ブチン、と女性の首がねじ切れて床に転がった。彼女はその状態のまま、口を動かした。 「ずっと、一緒よ。」 彼女はにっこりとわらっている。 大好きなお母さんが帰ってきて、男の子はとっても嬉しそう。 よかったね、よかったね。 喜んでもらえて、僕もとっても嬉しいな。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加