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「ほら、誕生日プレゼントだ」
そう言って、お父さんは大人の女性を模したロボットを家に連れてきた。
「このロボット、すごいんだぞ。お母さんの思考回路を埋め込んでてな、お母さんと同じ考え方をするんだ」
お父さんは僕に説明しながらロボットのスイッチを入れる。
すると、起動音が鳴り、ロボットの目が開いた。
ロボットは僕を見てニコリと笑う。
「健ちゃん、久しぶりね」
その声は確かにお母さんのもので、僕は思わず言葉を失いお父さんを見た。
「これで、寂しくないな」
そう言ったお父さんはどこか遠くの世界を見ているようだった。
お母さんが死んでから、お父さんはどこかおかしくなってしまったんだ。
何日も泣いていたかと思うと、感情を無くすように朝も夜も仕事を入れて働いていた。
そこまで狂うほど、お父さんはお母さんを愛していたのだろうか?
僕がいるのに
僕じゃお父さんの心を満たすのには不十分だったという事なのかな?
お母さんのロボットは、ガシャンガシャンと動き僕に近付く。
そして、僕の手を握ってきた。
手を握られた僕は驚いてお母さんの顔を見る。
体温を感じられる。
なんだこれは?
このぬくもりは何だろうか?
ふと、お母さんが生きていた時の事を思い出す。
あぁそうだ。
確か、お母さんもこんな感じだった。
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