喝采の果てに

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 このラーメンタイマーは別のではあるがカップ麺のCMソングのメロディなのだ。CMは15秒!4サイクルしたら1分だ! なんて事だ!メーカー同士の競争を越えて、ラーメンタイマーが別メーカーのカップ麺の為に力を貸したのだ! ああ、ならば俺はそれに敬意を表し、そのCMソングを歌おう!たとえ間の抜けたメロディであっても!たとえうろ覚えであったとしても! 俺は背筋を伸ばして高らかに歌おう! そして歌い終わったその時に、俺はようやくこの蓋を取ることを許されるのだ!  1分までの2サイクル。俺の歌は世界を震わせた事に違いない。 鳴りやまぬ喝采の嵐の中、俺は最高のタイミングで蓋に手をかけた。  長かった…。しかしこれで終わる。いや、始まるんだ!  「いただきます。」  いつも食べる奴の3倍の価格のカップ麺『爆アゲ!!むさぼりラー麺ッ(笑)』にようやく俺は箸をつける事が出来た。  ああ、インスタントなのに小麦が香るではないか! 蓋の上で温めておいたスープを注ぎ、手早くかき混ぜる。と、次の瞬間俺は絶句した。  天使よ… 教えてくれ。俺はどうしたらいい。  湯気に霞んだ視界の中で見た物の対処法を俺はついに思いつかなかった。  それは、底から浮かんできた『かやく』と書かれた小袋だった。
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