喝采の果てに

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 俺は三兄弟の中で一番のせっかちさんを注視した。  どうしたせっかちさん。  額に汗がにじむ。  おいおい、見守られているからっていくらなんでも遅すぎないか?どれだけ恥ずかしがり屋さんなんだ?  嫌な予感がする… と言うかもう間違いないだろう!  秒針さんはお仕事を完全に放棄して止まっていらっしゃる!よく見れば長針さんが今いる所って、さっきちらって見た所じゃあるまいか? なんて事だ!この時計は時を刻むのをついさっき放棄したって?冗談じゃない!電池切れそうなのはこっちも同じなんだ!もう少し頑張ってくれても良かったじゃないか! 大丈夫だ!こんな時はなんでもできるスマートフォンってのがあるじゃないか!華麗に紳士的に画面をタップ!  …  って、家の時計は遅れているんだった!この表示とはズレているんだった!  まだだ、状況を見極めろ、今なにが起こっている?何か打開策はあるはずだ! 1 大企業の提案にのって機を見計らっていた。 2 その目安になる時計が良い所で電池切れ。 3 スマートフォンの時計を目安にしていなかった。 4 実はまだすこしジっちゃんちの障子が気にかかる。  うぁぁあ!絶望的じゃないか!どうするんだ俺! そのタイミングは刻々と近づいていると言うのに!妥協するのか?安易にこの位だろうと適当な所で手を打つのか? 断じてならぬ!  今回は通常の3倍の額を投資しているのだ。ここで総てをあきらめる訳に行くものか。得られる成果は未体験なのだ!  頭を巡らせろ!何かできるはずだ!ピンチはチャンスだって子供向けの番組の中でもヒーローが言ってたぞ! ようしいいぞ俺、問題ない、頭はさえてる…多分。これをどうチャンスに変えるかだ。 そう、どう変えるか。 時間が分からない中、特定のタイミングを見つける方法…。  有る訳ないだろ!チャンスにならないピンチだってあるだろ!どう考えたって!ウソツキ―ッ!  それは突然の事だった。  絶叫したい俺が頭をかきむしりかけた時、前触れもなく流れ出した人を馬鹿にした様な間抜けなメロディ…。  これだぁっ!!  俺は即座に反応した。
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