喝采の果てに

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 そうだったそうだった!初めて使ったからうっかり忘れていた。  応募して当選した『ラーメンタイマー』だ!  そうだ!俺は湯を入れた時にこれをかけていたんだ!きっかり3分、こいつは絶望の淵から救ってくれた!  ありがとう過去の俺!どこかであったらキスしてやるぜ!  ・・・おェ~・・・。  お前が女だったらのハナシな…。   それじゃ俺も女じゃないか…。  いや、今はそんな事はどうでも良い、機は今!やっとだ!やっと!  猛抗議する腹の虫もこれで黙るだろう!  俺は目の前にあった物、いつもの3倍の価格もするカップめんの蓋に手をかけた!  だが次の瞬間愕然とする。  ば、ばかな。熱湯 よ ん 分 だと…  ?  最高のタイミングまであと1分だったのだ!  腹の虫はいよいよ抗議する。 俺耳元で悪魔が囁く。もういい、充分待った。1分なんてたいして変わりはない。食ってるうちにちょうど良くなるさ。 だが天使も囁く。あと1分で最高の状態にありつけるのです。メーカーが推奨する最高の味を食べてこそお金を出した価値があるのではないですか?  ラーメンタイマーが鳴った瞬間、俺の口も腹ももう食べる気満々になってしまった。そしてそこから1分を正確に測るにはもう何秒か経ってしまったのだ。 天使よ、どうしろと言うのだ。俺が悪かったのだ。カップラーメンは軒並み3分ででき上るという固定観念を持ってしまった俺が。そして蓋の表示を良く見もせずにタイマーをセットした俺が。壁の時計の電池を長い事交換していなかった俺が。  天使がまだ囁く。あなたならできます。あきらめないで!  どうしろって言うんだ?!素数でも数えろって?俺は素数をろくすっぽ知らないんだ!みろ!ラーメンタイマーまで間抜けなメロディを流して馬鹿にしているじゃないか! すると脳内で天使が微笑んだ。  間抜けなメロディ?そうか!過去の俺!どこかであったら結婚してやるぜ!                                        するか馬鹿!
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