僕の心が君に…

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彼女の唇が俺の口を塞いだ。 「じゃぁ、また学校でね」彼女はそう言いながら、帰路に帰って行った。俺は、ただ呆然とその場に立っていた。 翌日は休みだったため、親父の怒鳴り声は来なかった。何か、物足りなさを感じた。いつもはこんなに感じないのに、何故だかいつもよりも感じた。 リビングに行くと、母がテレビを見ていた。 「飯は?」 「テーブルの上」こちらを向かずに応えた。 「はぃょ」 朝飯はパンだった。いつもと同じだった。やる気のない母だといつも思う。俺は母に似たのかな?と、こうゆう時に思う。最悪だ。 昼を済ませ、特にする事もないから、散歩に出かける事にした。家の周りは栄えてはいないものの、散歩するには優れていると言える。 散歩は別に好きじゃない。でも、家に居るのは好きじゃなかった。家には、俺の居場所がないから。その居場所が、ドコにあるのかも分からないのだけど。 夕日を見ながら歩いていると、ふと人影が目に入った。その人影は、どこか不思議な感じを僕に伝えてきた。人影は夕日に揺れて、滲んでいた。その人影が揺れながら、僕を覆うように近付いて通り過ぎて行った。
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