王子様と毒の華

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(朝顔の種って、たしか毒があるんじゃ?)  青、白、桃色、定番の紫。夏といえばコイツ!!!とみんなが思い浮かべる妹みたいに可愛くて人気者の花。  枯れている朝顔を探して、種を採る。  ここで死んで誰かわたしを見つけてくれるのだろうか。ここミイラになるのは嫌だな。  でも、朝顔の種を食べて、死ぬなんて少し文学的じゃない? 高尚な死に方で、死んでから評価されるんじゃない? 平成のシューベルトになれるんじゃない?  ボリボリと朝顔の種を咀嚼して、あとは期待と一緒に飲み込むだけだ。 「かわいいね!」  ゴクンッ。  咀嚼していたわたしの頭で上から、透き通った男の人の声がした。 「の、飲んでしまった……」 「え、何か食べてたの?」  突然の声に驚いたわたしは種を飲んでしまった。終わった、わたしの人生終了だ。まだ心の準備できてなかったのに! 底辺人間だって、人生を振り返ってから死にたかった! 「もしかしてガム食べてたとか?  でも安心して! 一回ガム飲み込んだくらいじゃ死なないから!」  地面を見ながら、むせるわたしの背中を誰かがさすってくれる。わたしを驚かせた張本人だろうけど、やさしい。高校でこんなに親切にされたのは初めてかもしれない。 「きっと明日あたりお尻の穴から出てくるよ」  声の主に視線を向けると、王子様のような整容をした男の人がいた。金髪に明るいグレーの瞳、白い肌、細身の体に、輝きを纏った笑顔――。おとぎ話から出てきた人みたい。  久しぶりに誰かの瞳に写った。しかも、王子様の瞳に。     
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