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王子様と毒の華
わたしは透明人間である。名前はギリギリある。
「マンガの世界に転生したい……」
わたしは昨日読んだ少女マンガのことを思い出した。
マンガの主人公は常に愛されていて、世界の中心だ。いつもマンガを読んでいるときは高揚感に包まれていて、読み終えたとき喪失感に襲われて耐えられなくなる。
この世界に存在する人間は、わたしがいなくても平気な人たちしかいなくて、誰もわたしのことなんかみていないし、必要としていない。
しかし人間以外まで視野を広げると、少女マンガの主人公とは程遠いわたしにも学園の中に唯一わたしのことを必要としてくれる生き物が存在した。
「今日は奮発して富士山のお水だよ~」
お昼休み。いつも花壇で水をあげている。
そう、この学園でわたしを唯一必要としてくれるのはこの花たちである。
きっと、この花もどの生徒からもたいして見てもらえない必要とされないわたしのように透明な存在だ。
ひゅるるっと風が吹き、花が揺れる。
(楽に死ねる方法ないかな……)
虐められてるわけじゃなくても、ずっと存在しないかのように扱われるというのは結構メンタルにくるのだ。
深い溜め息をつくと、一輪の花が目に入った。
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