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制御不可能な♀
“かわいいね!”
さっき目の前の王子様が放った言葉。わたしの中で、除夜の鐘みたいに響いている。
「か、かわいくなんかないです。ほんとお目汚しもいいところで……。視界に入ってしまってすみません」
「なんでそんな卑屈になるの? 可愛さは僕が保証するからもっと自信持ってよ!」
ああ、美しい。この笑顔、国宝級だ。
こんなに褒めてもらえたのって人生初な気がする。男の人にかわいいって言われるのってこんなに嬉しかったんだな。心の底から絶頂だ。
妹はこんなふわふわした気持ちを毎日味わっていたのか。
「お世辞抜きで僕が今まで見てきた中で一番かわいいよ。
――この花壇」
「……か、花壇?」
「うん! 僕は特にこのアガパンサスが好きかな」
王子様はすらりと伸びた薄紫の花を指さした。
どうやら、人間カースト最下位のわたしなんぞが、おこがましい勘違いをしてしまっていたようだ。勘違いするってことは、わたし、もしかして壮大な砂浜にあるの砂一粒分くらい自分のこと可愛いって思ってるんじゃないか!?心の奥底でこんな風に思ってたなんて…、お恥ずかしい!
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